ラマダンとはイスラム暦(ハッジ暦)で9番目の月のことで、この月に多くの健康なイスラム教徒は日中に断食をします。

断食は罰のようなものではなく、自分自身を見つめ直すこと、神に対する感謝と忠誠を再認識することなどの深い意義があり、その手段として断食という方法が取られているのです。

また、イスラム教徒にとって、ラマダンはお祝いでもあります。

街は断食に合わせて動いていますので、不自由さがあることも確かですが、お祝いであることも確か。

近未来的な都市であるドバイの普段とは違った一面が見られるのもラマダン期間ならでは。

ぜひ、ラマダンとは何かを理解してラマダン期間中のドバイ旅行を楽しんで頂きたいと思います。

ラマダンはいつ?

2020年のラマダンは4月24日から5月23日の予定です。

ラマダンの日程は太陰暦であるイスラム暦に基づいていますので、正式な日程は実際の月を観測した結果をもとに各国で定められ、正式な日程はラマダン開始の直前に決定されます。また国により多少前後する場合があります(と言っても、ずれても1日です)。

ラマダンの日程がイスラム暦に基づくことから、日本でも一般に使われている、太陽暦であるグレゴリオ暦では毎年約11日ずつ早まっていきます。

2019年のラマダンは5月6日から6月3日でした。

ラマダンの意義と断食の意味

イスラム教徒にとってラマダンが大切なのは、ラマダンの月に預言者ムハンマドが神からコーランを授けられたと信じられていることによります。

イスラム教徒にとってラマダンはお祝いであり、断食、お祈り、喜捨(いわゆる寄付)を行うことが奨励されています。

ラマダンが始まると、イスラム教徒の人々は「ラマダン・カリーム (Ramadan Kareem)」と言って挨拶を交わします。Kareemは英語では"Generaous"と訳され、「寛大な」とか「豊富な」と言った意味ですが、ラマダン・カリームはラマダンおめでとうというようなニュアンスで使われます。これはラマダンがおめでたいこと、お祝いごとであることを表しています。

ラマダンの間、イスラム教徒は日の出から日没まで断食を行いますが、断食は飢えを味わう罰のようなものではなく、自分自身を見つめること、我慢すること、また、神に対する感謝と忠誠を再認識することを目的としています。

断食により、当然、空腹や飢えを感じますが、それによって貧しい人や十分な食べ物を得られない人に対して改めて想いを馳せ、行動すること、また、自分が恵まれていることに感謝するという意味も持っています。

したがって、イスラム教徒の義務である喜捨の多くがこの時期になされます。
ラマダン期間中は街中で食料を配っている光景を目にすることがありますが、これも喜捨の一環です。

断食は健康な成人が行うものとされ、子供や妊娠中の女性、心身が健康で無い人は断食を行わなくて良いとされています。
イスラム教徒では無い旅行者なども、断食を求められることはありませんが、ドバイではラマダン期間中に(特別に認められた場所を除き)公共の場で飲食することは禁じられています。
これを破ることは社会に対する敬意を欠く行為と見なされ、逮捕されることもありますので、ラマダン期間中にドバイを旅行される際は、日中の飲食については十分注意してください。

ラマダン時の日中の禁止事項飲食(水を飲むことやチューインガムを噛むことを含む)
喫煙
性的な行為等
音楽を演奏すること、その他のパフォーマンスを行うこと
(基本的な精神として禁欲が奨励されています)

ラマダン期間中のイスラム教徒の一日

朝は日の出前に起床し、朝のお祈りをします。
その後、朝食をとります。この朝食はスハール(Suhoor)と呼ばれ、このあと彼らが食事を口にできるのは日没後ですから、この朝食はとても大切です。

通常イスラム教徒は1日5回お祈りを行います。
(ドバイはイスラム教の中でもスンニ派と呼ばれる宗派に属し、お祈りは1日5回ですが、イランなどに信仰者が多いシーア派では1日のお祈りは3回とされています。)

お祈りの時間になるとモスクのスピーカーからアザーンと呼ばれる、お祈りの時間を知らせる「呼びかけ」が流れてきます。

歌のように聞こえるかもしれません。

ラマダン期間中はこの5回のお祈りに加え、タラウェ(Taraweh)と呼ばれる夜の礼拝を行います。

この夜の礼拝では毎日少しずつコーランを読み、ラマダンの期間でコーランをはじめから終わりまで読むことになっています。

1日5回のお祈り日の出前:サバフ(Subuh)
正午過ぎ:ゾホル(Zohar)
日没まで:アサール(Ashar)
日没直後:マグリブ (Maghreb)
夜:イシャ (Isya’)
夜:タラウェ (Taraweh) - Isya’の後(ラマダン期間中のみ)

日没後の食事であるイフタールの楽しみ方

長い日中の断食を終え、ようやく口にできる食事はイフタールと呼ばれています。

イフタールはホテルやレストランで提供されるほか、街中にあるイフタールテントと呼ばれる場所でも提供されています。
イフタール・テントでは喜捨の一環として、断食をしている人に対して食事が無料で提供されています。
出稼ぎ労働者、肉体労働者などが日没直前から列を作っている光景に出くわすかもしれません。

ドバイの多くのホテル・レストランではビュッフェ形式のイフタール(夕食)が提供されます(一部、イフタールでもコースメニューのレストランもありますので、ビュッフェにこだわる場合は事前に確認した方が良いでしょう)。

ホテルやレストランはもちろん有料です。

一部のホテルでは、商業用のイフタール・テントを建設しているところもあり、喜捨の一環のイフタール・テントとは異なり、有料ですが、イフタールの気分を十分に楽しむことができます。

イフタール・テントで夕食を楽しむ人々

ホテルやレストランでのイフタールは豪華なビュッフェであることが一般的ですが、断食を終えたイスラム教徒の多くは、初めにデーツと水を口にし、30分から長くても1時間程度で切り上げ、夜のお祈りへ向かっていきます。

お祈りなどを済ませた後、シーシャ(水タバコ)やコーヒーを飲みながら談笑したりして夜を過ごすようです。ホテルやレストランではスハール(Suhoor)と言って、シーシャやコーヒー、お菓子などを提供しています。

スハールを楽しむ現地の人々

この時間帯は朝までお祭りのように楽しむアラブ人もいれば、次の日の仕事などに備えて早々に切り上げる人と分かれるようです。

ラマダンの終わりとイードの始まり

ラマダンが終わるとイード・アル・フィトル(Eid Al Fitr)と呼ばれる、ラマダンの終わりを祝う大祭が行われ、人々はイード・ムバラク(Eid Mubarak)と言って喜びを込めて挨拶をします。

街は、Eid Mubarakとあちこちに書かれたポスターなどからラマダンの余韻を感じながら、通常営業に戻って行きます。